ストリートファイター2N 波動伝
エピローグ
「READY TO FIGHT」


 洞窟が一斉に崩れだした。動くことなんてできるわけがなかった。リュウはこれで自分の命も尽きたと思った。
 だがその時、あの乾いた音が聞こえた。波動≠ェどこかではじけたのだ。
 リュウは空へととばされた。既に雨は上がっており、藍色となって新しい明日を始めようとしている。
 リュウはそのまま、世界を見下ろした。
 ああ。なんと美しいのだ。

 着地したのは、島の中でも一番高い、切り立った崖の上だった。
 体の異変に気づいたのは、直後だった。
 怪我が、治っている。体の節々に刻まれた傷は、少しだけ痕を残して、すべてが完治していた。折れたはずの脚もなんともない。
 リュウは立ち上がった。崖に風が吹き込んできた。リュウの鉢巻がゆらゆらとなでられた。浮き上がって、世界へと飛んでゆく。
 この風は、どこまで届くのだろう。
 そうだ、風だ。俺は風となろう。

 リュウは、満足げに体を震わせたあと、力を込めて正拳を撃った。
 答えを探すために。明日へ歩いてゆくために。
 夜があけて、日が差しはじめた。
 暗かった海が照らされて、薄く透き通ってゆく。
 もう、迷いはなかった。

(完)


→あとがき
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