ストリートファイター2N 波動伝
ROUND.6
「友への誓い! 復讐の男ガイル」 part7


 ガイルは軍基地へと戻った。このまま逃げるべきだとミラーやナットたちは提案したが、ガイルは彼らを巻き込んでしまったことを気にかけたのだろう。潔く軍法会議を受けたのだ。
 結局、ボロボロだった俺も軍の病院に再び軟禁された。軍医師たちは、なぜか快く俺の手当てをした。
 数日後、ガイルの処分が決定した。軍からの登録抹消、そして追放だった。組織の話そのものを出したくなかった軍は、ガイルの軍における地位を抹消するという保身の策を講じたのだ。ナットやミラー、そして俺は、ガイルに脅されて協力したことになっていた。彼が全部罪を被ったのだ。
 ナッシュの遺体は解剖にまわされることなく、軍人の共同墓地に埋葬された。


 俺は怪我がよくなると、すぐさま軟禁を解除され、外へと放りだされた。荷物もまとまっていた。
 ミラーたちに挨拶し、基地の門を目指していると、ガイルがひとり、木箱に座っていた。彼も荷物を持っている。どうやら俺が出てくるのを待っていたようだった。
 俺は隣に腰掛けた。空は快晴だ。さわやかな風が頬をなでた。
「あれから色々とあったが、結局禁固刑にすらならなかった。どうやら軍はもう俺との関わりをすぐに、それも完全に断ちたいようだ。勝手にいなくなり、勝手に組織を追いかけて死ねってことらしい」
 ガイルは眉ひとつ動かさず、言った。
「これからどうするつもりなんだ」
「お前に言われた通り、ナッシュの意思を継ぐ。もちろん私怨もあるが、どうしてもあいつが命を懸けた意味って奴を作ってやりたい」
 戦闘機が、とろとろと地面を転がされてこちらへやってくる。きっと先にある整備工場へと向かうのだろう。ガイルはそれを寂しそうに見つめている。
「リュウよ」
「なんだ」
「これでお別れってのも悪くないが、最後にひとつ、どうだ。俺とストリートファイトってのは。けがはよくなったんだろう。理由はよくわからんが、シャドルーを追う旅を始めるまえに、一度お前と戦っておきたい」

 ガイルとのファイトが始まると、戦闘機の整備クルーたちが集まってきた。この間のことは、とっくにうわさになっている。そして噂とは勝手に肥大化するもので、ある兵士たちの話では俺たちはエイリアンと戦ったことになっていた。彼らが興味津々で向かってくるのは至極当然のことだった。
 それにしても不思議だった。あれだけ前回翻弄されたガイルの動きに、簡単についていけるのだ。ガイルが右、左と拳を突き出せば、それをタイミングよく受け止めることができた。
「やるようになったじゃないか。まあ、あれだけ軍の訓練をくそまじめに受けたんだ。当然かもしれんがな」
 真面目というのは他の軍人にもよく言われた。正直な話、俺からすれば彼らが不真面目なだけにも見えたのだが。とにかく、軍のマーシャルアーツに慣れたためだろう。
 接近戦は平行線だとわかると、ガイルは後ろへと下がった。追いかけるが、その途中でソニックブームを撃ってくる。彼は下がると同時に少しずつ波動≠溜め込んでいるのだ。やっかいだ。だが、以前のようにぶざまな醜態を晒すことはなく、ひとつひとつを飛散させて処理すると、攻撃を無効化させていった。
「もうそいつは効かないぜ、ガイルさんよ」
「では難易度を上げてやろう」
 ガイルはそう言うとまたソニックを撃った。これも当然受け止める。だが、油断した。その間にこちらへ走ってきていたのだ。足をけとばされ、体が平衡感覚を失う。それを見逃さず、強烈なアッパーが俺の頭を揺らす。このまま追撃が来ると思いきや、彼はまた距離を取った。
「もう一度だ。今度はよく見ろよ」
 今度はジャンプして避けてしまおうかと思ったが、動きの取れない空中じゃ、更に不利だ。反射的に、ガードしてしまうと、ガイルは後ろに回りこみ、柔道式の投げで俺の体を地面に叩き伏せた。ソニックブームを撃ち、ヒットすればそれでよし。処理できる相手には、そのスキに追い討ちでアドバンテージを得る。なんという完成された、合理的な戦術だろう。もしかしたらソニックブームはこの戦法のためにある技なのかもしれない。
 だが、打ち破らなければ。なんのために、ここまで来たんだ!
 立ち上がると、ガイルはまたしても距離を取っている。再びソニックを撃ってくるつもりなのだ。
「お前が倒れるまで、続けるてやるぜ!」
 ガイルは両手をクロスさせるタイミングに合わせて、波動拳を放つ。二つの波動技が、ぶつかり合った。
 すると、首尾よく二つの波動≠ヘ消滅した。思った通り、反対側から重なり合うと、エネルギーが相殺しあいゼロになるのだ。もちろん、威力が同程度だったからこそできた側面もあるのだろうが。
 だが、ガイルは驚く様子もなくさも当然と言ったふうに、もう一発、ソニックで攻撃してきた。負けじと、波動≠練る。しかしそこを狙われた。波動拳とソニックが消え去ったところにガイルが現れ、遠心力のきいたバックナックルを打ち込まれる。
 この戦法はつけこむ余地がない。このままでは負けてしまうだろうが、今の俺には考えがあった。このまま波動≠しばらく消費させればいい。防戦一方の状態で、戦いがしばらく停滞すると、ソニックを出すタイミングが少し遅くなったことに気が付いた。思惑通り、溜まっていた波動≠ェなくなってきたのだ。焦って攻撃してきたところに、何度か蹴りなどを当てることもできた。
「ちっ、タフだな。計算外だ」
「完璧だけど決定打に欠けるよな。それにしてもいいのかい、俺が有利になるようなことを言っちまって」
 本当は、何度も打撃を食らって結構ダメージが来ている。それを見透かしているかのように、ガイルは笑った。
「どちらにせよ、この戦法が通じない時点で、俺ができることはひとつになったんだ。そしてそれは、お前には敗れん」
 そう言って、ガイルはその場でしゃがみこんだ。彼の体に波動≠ェまとわれた。


→NEXT
←スト2N TOP