IMMORTAL MIND
イモータル・マインド

Part 2 [Red Zero]
幕間「妹と兄」

「こんな所にいたのか、マヤ。探したぞ」

 夕暮れ時の草原で、青年は少女に声をかけた。
 マヤは青色の目元をはらしながら草原に腰掛け、ベルスタの城壁と、さらに先に見える茜色の空を見つめていた。

「やだ」

 マヤは彼のことを見向きもせず、一言だけ言った。
 青年は、眉を下げて彼女の隣に座る。その目は優しかった。

「マヤは、今年いくつになった」
「九歳」
「だったら、わかるはずだ。兄さんは、行かなきゃならないんだ」
「やだ!」

 マヤは、立ち上がって兄を見る。

「どうして兄さんが行かなきゃならないの!? 別の人だっていいじゃない! どうして、どうしてグラン兄さんなの……」

 グランは、泣きじゃくる妹の頭をなでた。

「ごめんな……。でも、『蒼きつるぎ』の勇者と一緒に行けば、魔王を倒すことができるかもしれない。そうすれば父さんと母さんの敵も取れるし、魔族がいなくなって、みんなで幸せに暮らしていける。マヤだって、あの泉で水浴びしたいんだろう?」
「でも……兄さんがいなくなっちゃったら、マヤはどうすればいいの!? マヤも、マヤもつれてってよ……」
「マヤ、わかってくれ。危険な旅なんだ。お前を連れて行く訳には行かない」
「兄さんが死んじゃったら、マヤはどうすればいいの」
「大丈夫。兄さんは死なないよ」

 グランは笑顔を見せた。
 金色の髪が風に乗って、ゆらゆらと揺れた。

「きっと世界を平和にして、ベルスタに帰ってくるよ」
「本当?」

 マヤは不安げに兄を見つめた。
 グランは腕をクロスすると、その場に“魔力”の塊を作り出した。

「兄さん……」
「絶対に、帰ってくる。兄さんの電撃魔法の強さを、魔族の奴らに見せつけてやるんだ。父さんたちを殺したあいつらを、根絶やしにしてやる」

 グランが腕をはじくと、“魔力”の塊がはじける。轟音と共に雷が起こり、龍を象った魔法が天へと昇っていった。

「きれい……」

 マヤはそれを見て、涙を止めた。

「そして、笑顔で、お前の前に戻ってくる。約束するよ」
「……絶対だよ?」
「ああ。もちろんだ。マヤも電撃魔法の練習、続けておくんだぞ。魔王が死んでも、モンスターがいなくなるわけじゃないんだ。きっとその力はベルスタのために必要になる」
「うん」
「帰ってきたら、また二人で練習しよう。父さんが残した電撃魔法を、世界一にしような!」
「うん!」

 二人は、夕暮れの中を歩いて城壁へと戻っていった。




「……うそつき」

 ザイド・スプリングの廃屋で目覚めたマヤは、力なく言った。


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