第500弾




ファミスタ'94

群馬参謀VSスイマー

PartJ
















ファミスタ群馬決戦は、最終回の表。


4点ビハインドを逆に団結心に変えたナカユウ軍は、


一挙にキルバーンを攻略。1点差まで詰め寄る。



この絶好のチャンスで4番・ナカユウを迎えるが


スイマー軍はピッチャーを交代。


マウンドに上がったのは、なんと主将・スイマー自身であった。






守るはスイマー、攻めるはナカユウ。


ここにファミスタ群馬決戦、最後の戦いが幕を開けた。





















最終回の表、ナカユウ軍の攻撃。


一点差まで詰め寄ったところでマウンドに上がったのは……


これは驚きました。キャプテンのスイマー選手です。





キャプテンvsキャプテンですね。















意外だな。あんたが出てくるとは。




俺もだよ。むしょうに勝負がしたくなった。


最後の最後に、お互いの主将同士の対決。


ナカユウよ。最高のショーだとは思わんかね?




俺たちが今やっているのは……ショーじゃない。戦争だ。




戦争もショーのひとつだ。


どれ、ここの観客どもに拝ませてやろうではないか。


熱い勝負という奴をな!

















ゴゴゴゴ……










なんだ? スイマーの雰囲気が変わった。




スイマーの「ゾーン」が発動したのだ。




















「ゾーン」。


ただの集中をこえた、極限の集中状態のことを指す。



選ばれし者にしか入れない、聖なる領域である。


スイマーは度重なる水泳対決を通しこの力にめざめ、


かつては第401弾のテニス対決でもこれを披露した。














いつだったか、テニスの時にやってた奴だな。あの時は確か……





何人か、再起不能に追い込んでいたな。




し、しかしスイマーはこの戦いで疲弊しているはず。


そんな、今更「ゾーン」などと……



























も、もの凄い球だ!



全く疲れを感じさせませんね。




と、とんでもねぇ。こりゃ、勝ったぜ!




(た、球筋すら見えなかった!)




……。




完全なコンセントレーションだ。




こうなったスイマーちゃんは、誰にも止められないよ。

























スイマー、二球目もストレートでナカユウを追い込む。















な、ナカユウ! てめー突っ立てるんじゃねえよ! 次で終わりだぞ!




無理もないわ。アポロンやキルバーンなんて目じゃない。


今のは間違いなくこの試合で最高の球だった。




どうするんです、群馬参謀……!




ナカユウ! 意地を見せろ!


あのシムシティの時の粘りはどうした!












ツーナッシングか。ナカユウ、さすがに手も出ないようだな。




……。




きさままで、だんまりか。





(……隊長。)


















「切り札は先に見せるな。」


「見せるならさらに奥の手を持て」















すみません。あの約束、破ります。



















ズズ……













むむむ!? 今度は群馬参謀の気配が変わりました!




ナカユウよ、あれを使う気か。




ほう、ナカユウにも何かあるのか。




JD殿下。奴がなぜ私の懐刀として務めを果たしていられるか、お分かりですか?




確かに、もともと彼は武闘派ではないからな。


何か他を寄せ付けないほどの隠し球があるとは思っていたが。




そういうことです。


奴は今、それを使おうとしています。


人前では絶対に使わなかった、切り札をね。




















おおっとスイマー選手、ここでワインドアップに切り替えました。




よっしゃ! 走れ、舞!




命令しないで!





(スイマー! 気でも狂ったか!?)


















スイマーの第三球。


























ナカユウ、打ったー!





















しかしボールはライト際に切れてファール。









ど、どういうことだ? あの球に反応しやがったぞ。




今の球……セットポジションだったら完全にスタンド入りだった。




あれは
「超反応」か?




しゃ、しゃべった!?




リュウはやはり知っているようだな。


だが厳密に言うとスト2の
「超反応」とは違う。


あれは自力による
「反射」だ。


















スト2のCPUは研究に研究を繰り返された結果、


相手の攻撃ボタンが押された瞬間に反応してかわし、反撃に転ずるというレベルにまで成長した。


そこらの中級プレイヤーよりも強いとも言われる、このものすごい反射能力を


「超反応」と呼ぶ。















ナカユウはストリートファイターとして戦ううちに、


CPU速度を超える反応速度を身に着けた。


つまりナカユウは、集中を限界まで高めることによって


相手の動きを見てから、「超反応」を起こせるようになったのだ。


これはもはや
「反応」ではなく「反射」である。


ナカユウはその場の状況を一瞬にして判断し、自力で反射を起こす。




















これこそがナカユウの切り札、
「確定反射」である!















奴は対応者だ。自分から攻めるのは苦手な男なのだ。


だからこそ「受け身」を極める道を選び、この能力を開花させた。





あのナカユウに、そんな力があったとはな。


















スイマー第四球はボール。またしてもワインドアップです。



ナカユウもあの球を完全に見送りました。


入れば終わりという状況の中、よくあの判断ができますね。





またワインドアップか。ホームスチールでもしてやりたいが……


スイマーの野郎、全く隙がねえ。





無駄よ。あの状態のスイマーから盗塁なんてできない。


けん制されて終わりだわ。


ここはナカユウに託すしかないわね。

















ははは。面白いな、ナカユウ! まさか俺の「ゾーン」状態の球についてくるとは。





余裕ぶっこいてると、スタンドに叩き込むぜ……!






















スイマーは「ゾーン」の力で剛球を連発!
















ナカユウは「確定反射」でこれに反応、いや反射を続ける!













ナカユウの野郎、完全に反応してやがる。いつ打たれてもおかしくねえ……!





だがスイマーの球威も衰えがない。いつ抑えられてもおかしくはない。


















切れました、ファールです。




これで14球目ですか。さすがに、二人の集中も切れてきたようですね。




















いけません、スイマー将軍の「ゾーン」がとけてしまいました!




ナカユウも「確定反射」が続けられなくなったようだな。


二人の大技がぶつかりあって相殺したのか。


















疲弊したお前相手にもう「ゾーン」などいらん。


あと一球のストライクで、終わりだ。









お前こそ、息が上がっているぞ。


裏はとつおさんが投げてくれる。もはやお前らでは得点できまい。


あと一打のヒットで、終わりだ!

















さあ、スイマー振りかぶって第15球!




















うおおおおおおおおおおッ!


























限界なんてとっくに超えてる。


だが頼む。あと一回だ……あと一回だけッ!



































  

「確定反射!!!」








こ、こいつ! まださっきの技を!




























ナカユウ打ったぁーーーーーーッ!
























ナカユウの打球は大きな放物線を描き、スタンドへと向かっていく。


















しかし、スイマーとナカユウはボールには目もくれず、


ただお互いの瞳を見ていた。


















あ……!























だ、打球が勢いを失った!?





奈々氏さんッ!




お、おおっ!?












打球は奈々氏のミットへと収まった。



























6-7。試合終了。



ナカユウ軍、最後の希望を繋げず。


スイマーが見事に抑えゲームセットとなった。




















スリーアウトでスイマー軍、勝利です!


いやはや劇的な幕切れでした。


ナカユウの打球はスタンドインするかと思われましたが、力を失いました。




私の目にも、完璧に捕らえた当たりに写りましたが、急に勢いが落ちましたね。




6-7。素晴らしい試合でした。


それではみなさん、またお会いしましょう! さようなら。




























ふむ。殿下。どうしますか。




そうだな……いやはや、まいった。





隊長に殿下。今のはどういうことなのです?





簡単なことだ。奈々氏が今頃驚いているだろうよ。
















奈々氏さん、そのボール!





あっ!
















「われとる!」




















二人の力がぶつかりあい、インパクトの瞬間にボールが割れたのだ。




そうなれば打球は回転を保てなくなり、推進力を失ってしまう。


この勝負、スイマーの勝ちだ。




な、なんと……! それにしても、お二人ともテレビ中継でよくそこまでわかりますね。


それに、私たちは負けたのですよ……。わかっていらっしゃるのですか?






殿下。そろそろ。




うむ。



















直後、球場の一角から車が現れた。











あっ!












隊長に、殿下!? どういうことだ!?




いや、なに。実は裏から試合を見ていたのだ。




ははは。さすがに全員あっけにとられているようだな。





……どういうことだ? 


アヴァロン軍を警戒するために、二人は福岡にいると聞いたが?





ああ。周辺の奴らは俺と隊長でだいたい片付けといた。


福岡にいるのは残党だろうから、残りのメンバーでも充分だと思うぜ。


やっぱり頭を使うより一気にぶち壊したほうが楽だったぜ、JDさんよ。


今日の試合もよー、あんまり出るなって言われて辛かったぜ。




君には余計な口出しをすべきではなかったな。


君がやけにリラックスするから、この戦いが「演習」であることがいつバレるかヒヤヒヤしたよ。






え、演習!?





そう、全ては演習だったのだよ。君達の本気を見るためにな。


スイマー君、協力感謝する。




かまいませんよ。私としても得るものがありましたから。




なんと。ナカユウに宣戦布告したのも全て演技だったのですか?


せめて私に言ってくだされば……




お前らにも本気になって欲しかったのだ。


最後はガラにもなく、俺も本気になってしまったがな。




……。





まっ、そういうワケだ! 一件落着!























こうしてファミスタ群馬決戦は幕を下ろした。


異界の者たちは静かに帰ってゆき、


スロウ、奈々氏も今回の「演習」要員としてスイマー軍に加わったことを告白した。


しかし演習とは言え、スイマー軍に敗北を喫したナカユウ軍。


キャプテンのナカユウは責任を取り、群馬支部の一時解散を宣言。


しばらく最高幹部とつお傘下の最前線部隊に投入されることになった。

















ナカユウ。さっさと行くぞ。お前を徹底的に鍛えなおす。




とつおさん。少しお時間をいただけますか?




……行って来い。



















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スイマー……さん。





ナカユウか。どうした。最高幹部が待っているぞ。




いえ……その……。




非礼でも侘びに来たか? ははは、お互い様だ。気にすることはない。


やはりスポーツはいい。本気でぶつかり合えるからな。


全く楽しい勝負だった。





最後の一球。あれはやはり計算していたのですか?




なんだ、そんなことか。


そんなわけないだろう。正真正銘、俺は打たれていた。


球が割れていなければ、どうなっていたかわからん。





……そうですか。それともうひとつ。


今回のことは、本当に演習だったんですか? どうしても信じられなくて。





はは。愚問だな。当然だ。


ロングソード連合と戦おうなどとは思わんよ。




は、はははっ! よかった。安心しましたよ。


スイマーさんと敵対なんてしたくありませんからね。



















……なんて、言うとでも思ったか?


やはり甘ちゃんだな、ナカユウよ。


お前の切り札、確かに見せてもらったよ。




なっ!?




お前ひとりの奥の手一つ引き出すのに、随分と金をかけてしまったものだ。


だが、ほかの隊員たち含め、充分にデータは得られた。


その上で言おう。この戦いは演習だった。


もっとも、その後は知らんがね。






スイマー……!


おかしいと思っていたんだ。最後の打席、勝負に来る理由はなかったからな。


あんたは俺の「確定反射」を見るために……!







そういうことだ。


次はもっと凄いのを期待しているぞ。俺をあまり退屈させるなよ。

























隊長。




わかっています。


今は新しい兵士を集めましょう。


いつか来るであろう、戦いの時のために。
















おまけ